『ぼくは くまのままで いたかったのに……』

 最近のお気に入りの絵本は『ぼくは くまのままで いたかったのに……』(ほるぷ出版)。
イエルク・シュタイナーが文章を書き、イエルク・ミュラーが絵を描いている。
二人ともスイス人。
冬眠から覚めたら、工場の建設で周囲の環境が一変していた熊の悲哀……というように要約することも可能だろうが、絵も文章も、全体的におかしみと可愛らしさに溢れているのが印象的。
やり方によっては、どこまでも重くなりそうな話に軽さをもたらしたことで、より深く魅力的な作品になっている。
 
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000000119638&Action_id=121&Sza_id=C0
 
 イエルク・ミュラーの絵は、やはり絵本作家のビネッテ・シュレーダーや、アニメーション作家のジャン=フランソワ・ラギオニのような絵柄。
前者はドイツ生まれでスイスで絵を習っている。
後者は、フランス人。
人工的な光と単純化されたフォルム、なめらかな質感に嘘くさいくらいのノイズの排除。
そういう西欧絵画の一つの伝統。
世界をシニカルに描くのに最適な手法の一つ。
 
 もともとはどこから来ているんだろう。
 
 アニメーション作家ポール・グリュモーの驚異の映画『王と鳥』でも、とくに建築物の処理の仕方が、こういうものだった。
ベルギーのポール・デルヴォーなんかもこういう光とフォルムを使う。
多少、離れてしまうかもしれないが、デルヴォーとおなじくシュルレアリスムの画家であるダリやイヴ・タンギーマグリットなどにも通じるものがあるだろう。
 
 源流はマレーヴィチだろうか?