オルグ

 11月8日、国会前に集まった群衆の中で叫んだりぼーっとしたりしていると、一人の男性(20代後半くらい?)に話し掛けられた。辺りがすっかり暗くなったころだ。ちょっと太めで素朴な感じの男性は民主青年同盟員を名乗っている。民主青年同盟、略して「民青」とはどんな組織かそれまで知らなかったのだが、名前からも大体想像がついたし(いまどき「同盟」!)、話を聞いているうちに見当がついてきた。



 要するに共産党の若手集団なのだけど(建前としては、共産党と民青は別組織ということになっている)、なかなか共産党の名前は出そうとしない。多分、昨今の日本の言論状況では、出しにくいというのもあるだろう。



 しばらく「若者の雇用」の問題や民青の活動内容について、パンフレットを参照しつつやりとりをしているうちに(その間、僕と民青の同盟員の周囲では「教基法反対」の演説とシュプレヒコールが繰り返されていた)、「私達、ときどき共産党に相談をさせてもらっているんですよ…」と来たので、ここで変に意識した反応をすると悪いかなと思い、さらっと「ええ、ええ」と答えてみた。



(しかし、なるほど、勧誘ってのは、こういう場所でもやっているのね…。まあ確かに彼らにしてみたら、何匹か釣れないこともない気がする集まりではあるだろう。ちなみに、私の2mほど後方に二十歳前後とおぼしき女性の二人連れがいて、ふと見るとやはり民青に勧誘されていた)



 個人的には興味津々だったのだが(メラメラと好奇心が燃え上がっていた)、やはり警戒心もあった。普段どんなことしてるんですか?と聞くと、「班会」というものをやっているとのこと。地域の同盟員で集まって、勉強会をしたり近況報告をしたりするんだそうだ。「もしよろしかったら…」と言われ「うーーーん…」と沈黙してしまった。一応、電話番号の交換をしておく、というところに着地点を見出した辺りで(話し始めてから20分くらいは経っていただろうか)、やはり彼と同様、オルグのために馳せ参じていたのであろう民青の同盟員が2、3人私たちの方へやってきた。



 「今、連絡先を伺って…」というような会話が行なわれ、女性の同盟員にも「どうですか?是非」とにこやかに誘われたものの「うーーーん…。考えておきます」と言って、そのうち、そろそろヒューマンチェーンもお開きという感じになってきたので、そのまま別れ、家路に着くべく地下鉄丸ノ内線国会議事堂前駅に向った。



 地下通路で切符を買う場所を探したり、並ぶ場所を間違えて並びなおしたりしているうちに、さきほどの3、4人連れの同盟員たちが通りかかった。「あ、さっき…」という感じで、再び「一緒に民青やりましょうよー」と言われ「じゃ、一回参加してみます」と答え、「座間にも班会があるので…」ということだったので、私の電話番号が民青のそちらの責任者に伝えられることになった(個人情報の大安売り)。



 そんなわけで何回か電話でやり取りをした後、17日の金曜日の班会に参加することになった。班ってのは、大体何人くらいいるのかと聞くと、十何人かいるらしいが普段、班会に出るのは、4〜5人ということだった。警戒心のある新参者としては、人数が少ないのと多いので、どちらが良いのか判じかねたが、まあ、総合的に考えれば少ない方がよいだろう。



 8日に、家に帰ってからすぐ民青のHPを見た限りでは、加盟条件が25歳までということだったので、30歳のおっさんでも「青年」でよろしいのかと聞いたのだが、そこら辺は厳密にはしていないらしい。そんなわけでワクワクしながら17日を待つことになった。